アリスのしっぽ

何せうぞ くすんで  一期は夢よ ただ狂へ

恋する閑吟集①ー花の錦のー

 *原文・現代語訳などはすべて岩波文庫「新訂閑吟集」(浅野建二校注)による。

  なお、今後このブログ内の閑吟集関連の歌はすべてここより引用する。

閑吟集」は中世、室町時代の小歌集です。格調高い恋の歌から、男女の営みを赤裸々にうたっているものまで様々です。それが春夏秋冬、四季の移ろいと共に見事な流れで構成されています。たくさんある小歌の傑作の中から、私が好きなものを一つづつ折々ご紹介します。歌はランダムに取り上げるので、順番はバラバラです。お許しを。

 

1・花の錦の下紐は 解けてなかなかよしなや 柳の糸の乱れ心 いつ忘れうぞ 寝乱れ髪の面影

 しょっぱなの小歌がこれですよ!パンチありますよね。冒頭からいけないものを見てしまった気分でした。「下紐」「解けて」「寝乱れ髪」とくるので、おわかりですね。こういう小歌が満載です。でも、「花の錦」と「柳の糸」という二つの言葉が、この小歌にとても華やかな色をつけてくれていますね。掛詞(かけことば)もたくさん出てきます。

「下紐を解く」には「花のつぼみが開花する」という意味もあるそうです。いや、わからんよ、それは(笑)

「花のように美しいあの子の下裳の紐がようやく解けて、思いを遂げることが出来たが、それがかえって今では詮ない悩みの種よ。私の心は風になぶられる青柳の糸のように乱れ、思い悩むばかり。ああいつになったら忘れることだろう。あの寝乱れ髪の愛しい面ざしを」